@のっけから翼型と揚力の重要な事実を教えていただきました。
1)翼型はなぜ揚力を発生させるのか。それは上面(リーサイド)流の平均流速が下面(ウェザーサイド)のそれより速いからである。、、、それ自体は正しいのだが、
2)その理由として、上面流と下面流が翼型後端で同時に到着するからである(だから、長い距離を走らされる上面流は、短い距離の下面流より速くなる)とする理論の間違い。
3)正しくは、、、流体に粘性がなければ、翼型後端近傍にも下面からの急激な回り込み流が現れ、これにより(上面の負圧につりあう程度の)瞬間無限大の正圧が発生する。しかし空気や水には粘性があるので、この回り込み流が流されてしまい(Kutta 条件)、くだんの瞬間無限大の正圧は消滅し、上面前部の大きな負圧のみが残り、つまり揚力が発生する。
Kutta 条件:
翼のとがった後縁では、上下面からスムーズに流出するような流れしか存在し得ない(smooth-flow 条件)。
丸い背中の翼を持たない紙飛行機がなぜ空を飛ぶことができるのか、それは紙飛行機の翼の後縁がとがっているからである。
@聴講のヨットデザイナー陣が非常な興味を示した、翼の失速対策。
つまり、翼の前にスケグ状のフィンを付けるとその前縁剥離渦によって、翼の失速到来角度を大幅に遅らすことができる。戦闘機の実例では迎角100度付近までも失速せずに航行することが可能である。
@ エトセトラ、エトセトラ、、、
@桜井先生から、ヨットデザイナー諸氏への問いかけ
1)面積が小さくてアスペクト比の高い翼の使用もよいが、船体全体の濡れ面積を考慮に入れて、しかも大きな迎角でも失速しない、船体を含めたトータルな視点で翼形状をデザインするという手法はどうか、、、
2)ヨットのラダーは単体ものがほとんどだが、なぜ飛行機のようにその後端にトリムタブをつけないのか。こうすれば、ラダーにかかるトルクがずいぶん軽減できるのに、、、
3)エトセトラ、、、
桜井先生は(飛行機方面はひとまずおいて)セーリングヨットを今後の研究課題とされるそうです。当面、ヨットの空中翼部分、つまりセール部それ自体が自己バランスできるシステムについて研究を進めるお考えのようです。
25年前、大橋がオランダに就いたころ、欧米の大学教授が曳航水槽でヨットを引く姿や、ヨットの艇上でセールを繰る姿を見て、彼我の違いを強く感じたものです。しかし今や日本でも、桜井先生や、増山先生、野本先生、ニッポンチャレンジの先生方、その他多くの先生方の実像を目の当たりにする時、わが国でもそのような景色が常態化しつつある、いやそれ以上になりつつあるのだなァ、と痛感する今日この頃です。
今回の「ヨットの科学」では待望の2次会が実現しました。夢の島マリーナの東京ヨットクラブのご配慮でクラブルームをお借りしたのですが、ここが19:30まで使用可能ということで、クラブライフ(?)を十分に堪能することができました。