|
|
開催日時: 2008年10月18日(土曜日)13:00〜15:00
|
|
|
|
<講演内容>
セーリングヨットはただの船ではありません。
その性能を考える時は、飛行機と同じような考え方をしないといけません。
これを簡単にやってみようというのがVPP(速度予測プログラム)です。
例えば、動力船の場合は船を軽くすると速くなるのは当たり前ですが、
セーリングヨットの場合はインナーバラストを取り外したら速くなるとは限りません。
また、単にセールエリアを増やせば速くなるというものでもありません。
こんなことを考える時に、VPPが必要になります。
でもVPPを使うためには、実は皆さんが(多分)大嫌いだった、
あの“連立方程式”を解かないといけません。
そのためには本当はややこしいプログラムを作らないといけないのですが、
実は皆さんがパソコンでお使いのExcelには、
この連立方程式を手軽に解いてくれる機能がついています。
ここでは、この機能を用いてExcelで手軽に計算できるようにした
“増山VPP”を紹介して、クルーザーの帆走性能解析を体験して頂きたいと思います。
なお演習は各自のノートパソコンで行って頂きたいと思いますので、
Excelが使えるノートパソコンをご持参下さい。
なお、Excelのソルバー機能をあらかじめ使えるようにしておいて頂きたいので、
下記のセーリングヨット研究会ホームページの議事録を参考にご準備下さい。
(もしよく分からなければ、とりあえずOffice(Windowsではありません)
の入ったCDをご持参頂ければ、会場で設定できます。
なお、Windows Vista で動くOffice 2007 の Excelへの対応は確認していませんので、
できればこれよりも以前のバージョンのものをご持参下さい。)
http://syra.aero.kyushu-u.ac.jp/Database/ExcelVPP/ExcelVPP.pdf
第33回セーリングヨット研究会向け資料、
「Excelを用いた定常帆走性能の推定計算(VPP)」講義録の、
4ページ目の青字部分です。なお、講義はこの講義録の内容を大幅に
噛み砕いたものにする予定です。チラッとお目通し頂いて、
ここが理解できないというところをご質問頂ければ講師の参考にもなりますので、
よろしくお願いいたします。
|
<講師の自己紹介>
講師プロフィール:
昭和47年〜50年:
熊沢舟艇研究室にてヨット設計を熊澤時寛氏に師事。
昭和50年〜:
金沢工業大学工学部機械工学科勤務。
現在、機械工学科教授。
流体力学研究の一環としてヨット性能解析に取り組む。
平成5年に「セーリングヨット研究会」が発足し、当時から現在まで
座長を仰せつかっている。
講師自己紹介:
流体力学研究の一環として、30年以上にわたってヨット研究に取り組んできました。
この間、種々のヨットの性能解析や実験を行ってきましたが、
特に重要なものは次の2つです。
1. 帆走性能実験艇"FAIR V"を用いた海上帆走実験
実船の海上帆走実験を行うためには、排水量や重心位置が明確なことは勿論ですが、
船体各部の重量分布など詳細な諸元のはっきりした船を用いる必要があります。
たまたま、金沢工業大学の海洋研修用の支援母船を設計する機会を得たので、
このような実験を行うことを念頭において、全長34フィートの外洋帆走艇"FAIR V"を
1988年に設計建造することができました。
この艇を用いて数年にわたって実船データを採取しましたが、
特に当時運用され始めたディファレンシャル型のGPSシステムを
用いてタッキング操縦運動の動的な計測を行い、
運動方程式によるシミュレーションとの比較を行いました。
これはセーリングヨットのタッキング操縦運動を本格的に解析した
世界で最初のもので、この内容を論文発表した
アメリカのチェサピークセーリングヨットシンポジウムにおいて
高く評価されました。FAIR Vは、現在も運用しており、
セールプランやフィンキールなどを変更し、
これらによって性能がどのように変化するかなどを継続的に調査しています。
2. セールダイナモメータ船"風神"によるセール流体力の実船計測
我が国からアメリカ杯に挑戦した、ニッポンチャレンジチームの
船型委員会委員としてお手伝いしましたが、
1995年大会に向けた委員会でシップ・アンド・オーシャン財団の支援のもとに、
セールダイナモメータ船"風神"を建造する機会を得ました。
これは実際に帆走しながらセールに作用する力を直接測定するシステム
(セールダイナモメータ)を内蔵した特殊な艇です。
実は、実船性能とVPPの間の誤差は、
全てセールデータのあいまいさにしわ寄せされていたのですが、
これを何とかはっきりさせようということで、
風洞実験では得られない実物大レベル(AC級の約40%の大きさ)
のセールを用いて、セール形状と性能の同時計測を行うのが目的でした。
同じようなコンセプトの艇は、当時アメリカのMITで運用されたものが1艇と、
最近ドイツで1艇建造されたものがありますが、風神が最も本格的なものです。
風神は1994年春に進水し、AC級セールの数値計算のバリデーションと、
スピネカーやジェネカーの開発用にフルに運用され、成果を上げました。
1995年大会終了後は、1998年までIMS級のセール実験に取り組み、
セール形状と性能のデータベースを構築するとともに、
数値計算との比較を行ってきました。これらのデータは現在も活用されており、
最新のCFDによるセール計算のベンチマ−クに用いられています。
なお、風神はその後も、和船の弁才形の帆や、
ジャンク形の帆(伸子帆)の性能計測にも用いられています。
|
<講義内容>
1. VPPとは何か
2. 増山VPPとIMS-VPPとの違い
3. 増山VPPの内容
船体に作用する水の抵抗と揚力、セールに作用する空気の推進力と横押し力、
船体の復原モーメント、力とモーメントの釣り合い、釣り合い点の求め方
4. Excelを用いた増山VPPの使い方
5. 演習
|